しかし、管理する以前にプロジェクトの生産物を予定して完成させる実力がなければ管理のテクニックは役に立ちません。
その上で、プロジェクトを管理するということはどういうことなのか、どうすればプロジェクトを管理できるのか、必要な手順を解説していきます。
目次
プロジェクト管理の目的
なんとなくスタートして、考えながら作業して、それっぽいものが出来て、でも、結果的に予算も期間も機能も満たしている。
ということであれば、プロジェクトとして行う必要あはありません。
成果を事前に計画し、達成後のイメージを共有し、予算を取り、 目標達成を保証する。
このような必要がある場合、プロジェクトは必要となります。
また、プロジェクトの目標達成を促し、保証していくのがプロジェクト管理です。
大きく分けて、プロジェクト管理の目的は下記のようなものになります。
- プロジェクトの完了を担保する
- 課題を調整しトラブルを回避する
- 人員や資材を調整する
プロジェクトの完了を担保する
プロジェクトを用いて、何かを達成しようとする場合、そのプロジェクトには、目標、予算、期限、があります。
目標の達成には、どうやってそれを実現するか、その能力があるのか、可能であればどのぐらいの期間を要するのか?
という事柄に対してプロジェクトの序盤で目途が立っていなければなりません。
「めちゃくちゃ運動して、今週中に5キロ痩せる」とか、「2倍の金額払うから、今週中に家を建てて」などという目標は、おおよそ実現可能な計画とは言えません。
逆に言えば、それを可能にする特別な段取りさえできていれば、プロジェクトとして管理可能と言えます。
そして、一旦実現可能な計画が立ったら、プロジェクトの目標が達成するまでの期間を通して、期限内に目標を達成することを保証し続けなければなりません。
これが、プロジェクトの第一の目的です。
課題を調整しトラブルを回避する
プロジェクトを進めていく過程で、部分的に遅れが生じてしまったり、新たな問題点が発覚してしまうことがよくあります。
「資材が届いていない」「作業内容が不明瞭」「仕様に矛盾がある」「行政の許可が間に合わなかった」
等、計画を立ててから作業を始めたとしても、大なり小なり作業を止めてしまう事態は発生します。
このように、作業の進捗を止めてしまう要因をブロッカーと呼びます。
プロジェクト管理の目的の2つ目は、このようなブロッカー要因を検知し、解消することです。
例えば、
- (事前対処) ・・・作業がストップしてしまうような要因を前もって検知、遅れが生じないよう調整する
- (事後対処) ・・・作業がストップしてしまった場合、空き時間に別な作業を割り振る事で全体の進捗には影響出さないように調整する
といった対応がこれに当たります。
人員や資材を調整する
特定の人に負荷が集中してしまうような状況がよく発生します。
手を抜いたり、人に押し付けて何もしない人も、現実に存在します。
このようなことを防ぐため、作業をリスト化、数値化し、各担当者への負荷を適切に割り振ることが必要です。
特定の担当者に負担が集中する状況は、実務能力の高い人が急に抜けてしまうリスクを引き起こします。
ここで言う、「担当者が抜けてしまうリスク」は、単にメンバーが退職してしまうことだけではありません。実務能力の高い人は、昇進も早く、実務から離れてしまう傾向にあります。
管理職となった実務担当者は、他人のフォローに時間を割くことになります。自分より実務能力の低い人から判断に必要な情報を聞き出すことは、非常に稼働を取られる上に不正確です。
そのうち、管理職は実務経験は古いものになり、チーム全体としての業務遂行能力が下がってしまいます。
また、特定の人に頼り切りになってしまうと、プロジェクトの中心になれる人が育たず、複数のプロジェクトを同時に立ち上げられなくなってしまうという弊害も発生します。
ですので、費用対効果の面でも、人材育成の面でも、普段から広く担当者に適度な負荷をかけておくことは非常に重要です。
また、少し先までのスケジュールを明示しておくことも重要です。
深く学びながら、じっくり作業を進めるのか、急いで作業を終わらせて休みを取るのか、担当者が自分で決められることは精神衛生的に望ましい状況です。
「デスマーチ」や「ブラック」といった状況の問題点は、単に負荷が高いということだけではなく、高いプレッシャーや長い稼働を人に押し付けられる点にあります。
もし、自分が成長し、改善してもノルマを増やされるだけならモチベーションが上がる訳はありません。
反対に、忙しくはないけれど、作業内容が明確でない、スケジュールが明確でないために、休みが取れないような状況も問題です。
このような場合、作業効率が悪い方が得ですから、組織全体に「前進しているフリ」の空気が覆います。
プロジェクトには、組織を強化し、メンバーの人生を充実させる力もあるのです。
有効活用したいものです。
プロジェクト管理には何が必要か?
それでは、プロジェクト管理を成りたたせるめの条件を簡単に紹介しておきます。
この部分は、理屈としては、すんなり納得できると思います。しかし、実現には十分な計画力、実務能力を要求されます。
まずは、実務を遂行する能力を高めましょう。その上で、作業を計画し、プロジェクトを計画通りコントロールしていく力をプロジェクトを通して高めていきましょう。
正しく計画できれば、それだけ、プロジェクト管理の果たす役割も十分に発揮されることになります。
それでは、プロジェクト管理を実施するにあたって必要な要素を確認していきましょう。
プロジェクト管理に必要な要素
- 実施する作業が把握されている
- 実施する作業の完了条件が決まっている
- 実施する作業が数量で把握されている
実施する作業が把握されている
プロジェクト管理の第1の条件は、プロジェクトで実施する作業が一通り洗い出されている事です。
「リスト化」と呼んでも、「見える化」と呼んでも構いません。「これとこれをやったら100%」と言えるような作業名がリストアップされていることが必要です。
作業名のリストがなければ、管理する対象すら確定できません。
実施する作業の完了条件が決まっている
プロジェクト管理の第2の条件は、各作業の完了条件が決まっていることです。
例えば、「参加者を確定する」という作業があったとしましょう。その「参加者を確定する」作業の対象となる作業が、単にExcel上の名簿を更新するだけなのか、
あるいは、全候補者に連絡を取って出席を確認することなのか、案内状を送付するのか、しおり・チラシの発注は必要なのか・・・
完了条件を何に設定するかによって、その手間も予算も10倍の開きが発生することになります。
また、言った言わないのトラブルや、過少定義による手抜きもこのことがきちんと実施されていない事が原因です。
何が終わったらその作業が終わったと言えるのか、そのために何を実施するのか、条件をきちんと決めておきましょう。
実施する作業が数量で把握されている
プロジェクト管理の第3の条件は、作業内容から作業工数が数値で把握されていることです。
ここでいう数値は、誰が作業を実施するのか(自分でやるのか、外注するのか)、数値の対象が作業時間なのか、金額なのか、によって異なってきますが、
おおよそ「見積もり」と考えて問題ありません。
金額か、作業時間か、あるいはその他のいくつかの要素を組み合わせた指標か、いずれにしても、作業の完了が、完了条件と相関関係のある数値で表現されていればこの条件は満たしていと言えます。
先程紹介した、3つの条件がそろっていれば、その作業のを表す数値の積み上げと実際の作業の進み具合がおおよそ比例し、プロジェクトの進捗率を計測することがでるようになります。
この特性を利用して、プロジェクトが完了できそうか、プロジェクトの期間中を通して、遅れが発生を予防し、もし発生した場合、その対策を打つことになります。
また、数量把握について、計画と実際の作業の間に誤差が発生することは当たり前のことです。
それでも、その誤差がおおよそ10%~30%に留めることができていれば、リカバリー可能といえます。
見積もり誤差が十分に小さく、残業すれば終えられる、または原価は確保できる、という状況にコントロールすることもプロジェクト管理の重要な役割です。
これがもし、誤差が50%以上もあった場合、リスケジュールの繰り返しとなり管理コストを払う意義は失われてしまいます。
現実には、計画すらしないまま、形だけ管理っぽい手順を行っている場合も見かけます。さて、その場合、プロジェクト管理は一体何を評価して、何の役割を果たしていると言えるのでしょうか?
管理のタイミングと実施内容
実際のプロジェクトの管理では、おおよそ以下のような作業を実施することになります。
- 課題のリストアップ
- 見積り/スケジュール立案
- プロジェクトアサイン/作業アサイン
- 作業結果のレビュー/承認
- 記録ルールの提供/督促
- 作業結果の記録
- 作業進捗の計測/集計
- 問題点の検出/課題の調整/リスケジュール
- プロジェクト評価/報告
- 実施判断/出荷判断(もしくは判断材料の提供)
このうち、「課題のリストアップ」、「見積り」、「スケジュール立案」、「記録ルールの提供」については、計画工程で1度だけ実施します。
次に実施のタイミングです。
プロジェクトの管理をするタイミングは次の3つの種類があります。
- 期間ベース ・・・日報、週次ミーティング、締め作業・・・等、一定の期間ごとに行う管理
- 作業ベース ・・・作業の開始判断、完了報告、調整依頼・・・等、作業の実施に沿って行う管理
- 工程ベース ・・・出荷判定・・・等、プロジェクトの区切りでとなる特定の時点で行う管理
それでは、以下に、各実施タイミング毎の管理の内容を記載していきますので、それぞれのプロジェクトの実施形態に合わせて必要な事を行ってください。
期間ベース
日次 | 日の始め |
実施者
実施形態
実施内容
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---|---|---|
作業中 |
実施内容
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日の終わり |
実施者
実施形態
実施内容
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週次 | 週の終わり/週明け |
実施者
実施形態
実施内容
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月次 | 月の終わり/月締め明け |
実施者
実施形態
実施内容
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アジャイルにおけるスプリントミーティングの実施時期と実施内容については、別途章を設けて説明します。
作業ベース
プロジェクト全体の進捗は各作業の完了お積み上げですから、作業完了のタイミングでの進捗の記録や報告は重要です。
それ以上に、作業ベースの管理で特に重要なのは、他の作業やプロジェクト全体に支障をきたすようなトラブルがある場合、それを検知し、リカバリー策をや代替案を早めに手当てしていくことです。
①作業開始までの期間 |
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②作業開始直前 |
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③作業実施期間中 |
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④作業完了時・作業完了後 |
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工程ベース
プロジェクトでは固定の期間や作業の実施時以外に、プロジェクトにとって意味のあるいくつかのタイミングで状況の把握・報告をする必要があります。
少なくとも、プロジェクトの完了時点で、目標を達成したことが確認されなければなりません。
①計画工程完了時点 |
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②目標達成時(必須) |
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③プロジェクト期間中 |
(例)ブロックに分けて行う大規模な製造工程等、それぞれのブロックが必要な条件を満たしている事の報告 (例)ユーザーテストを開始する前のリリース判定 (例)部分的な使用を開始する場合、使用する部分の検査報告 |
まとめ
- プロジェクト管理の目的はプロジェクトの目標達成を担保すること
- プロジェクトを管理するためには実施内容・完了条件・工数が数値で把握されている事が必要
- プロジェクト管理を適切なタイミングで実施し、問題・人員・資材を調整し、トラブルを回避する